わたしだけの吸血鬼
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「あ、ここだ」
私は館内図を頼りに、目当ての本棚にたどり着いた。探していた本の他にも気になるタイトルがいくつかあり、本棚から抜き出してはパラパラとめくっていく。
夜紅さんが吸血鬼だという確信を得た私は、こっそり吸血鬼について調べ始めた。学校の図書室、地域の図書館では飽き足らず、今日は学校帰りに少し遠出して区立図書館までやって来た。
(手がかりなしか……)
私は落胆のあまり、はあっと大きなため息をついた。
日光を浴びると灰になるとか。ニンニクが嫌いだとか。どの本も私にとって役に立たない情報ばかり。
(夜紅さんは日中も元気に動き回るし、ニンニクだって好きだもん……)
人の生き血を啜り栄養源とする生き物。それが一般に浸透している吸血鬼の定義。創作物の多くではその存在はおどろおどろしく誇張されている。
今のところ、現代に生きる吸血鬼の生態について詳しく記されたものは見つかっていない。