わたしだけの吸血鬼
それでも何も知らないよりはマシだろうと、吸血鬼に関する伝承をまとめた本を二冊借り、区立図書館を後にする。
家路の途中でコーヒーショップに立ち寄り、借りた本を読んでいく。
吸血鬼について調べる一方、血縁に『ナエ』という女性がいるかどうか役所で戸籍を確認した。
電子帳簿が導入される前の古い住民台帳に記録が残っていた。
ナエさん――東雲奈江さんは私のひいおばあちゃんにあたる。明治時代の生まれで、二十歳で結婚。二人の子供を出産し、二十七歳で亡くなっている。
士門くんが言っていたナエさんが、私のひいおばあちゃんのことなら夜紅さんは少なくとも明治時代から生きていることになる。
なぜこれほど執拗に吸血鬼のことを――夜紅さんのことを調べているのか。
自分でも理由がわからない。
ただ、知らなければならないと思った。
何も知らないまま、夜紅さんの傍にはいられない。いたくない。
――あの人が好きだから、全部知りたい。