わたしだけの吸血鬼
◇
(やばっ。門限過ぎてる!)
図書館で借りた本を読み耽っていたら、すっかり門限のことが頭からすっぽ抜けていた。
(絶対怒られるやつだ……!)
時刻は既に九時半を過ぎている。私の門限は九時だ。走ったところでもう間に合わない。せめてもの悪あがきで帰り道をショートカットしようと、夜の公園の中に足を踏み入れた。これで五分は縮まるはず……と思ったのも束の間、私はすぐに後悔した。
「ギャハハ!」
「お前ー!うるせーよ!」
昼間は子供の笑い声しか聞こえない普通の公園に、夜はガラの悪い男性達がたむろしているなんて最悪だ。
(え、本当にここ通るの?)
街灯の下では七、八人の男性が車座になり、大声で何かを喚き立てている。彼らの周りには缶チューハイの空き缶がいくつも転がっていた。
(やっぱり無理!)
引き返そうとしたその時、男性のうちの一人と目が合うという痛恨のミスを犯した。