わたしだけの吸血鬼

「辛かったな」
「あ……」

 労りの言葉と共に抱き寄せられ、私の涙腺は決壊した。
 葬儀の最中はずっと我慢していたのに、涙がポロポロと溢れ出して止まらなくなる。

 別れは本当に突然だった。

 いつも通りの朝。いってきますといってらっしゃいの挨拶を交わしたその後に、二人は信号無視をした車に撥ねられ帰らぬ人になった。
 現実を受け止められないまま二人は骨となり、ちっぽけな骨壷の中におさまってしまった。

 なぜ、どうして。
 悲しい。辛い。誰か助けて。

 私は燻っていた思いの限りをぶつけるように彼を掻き抱いた。

 大嫌いになってしまった桜が宙を舞う。

 私は赤の他人の温もりに縋りつきながら、窓の外を自由に舞い踊る花びらを見ていた。

 あの日を境に、私の世界は変わった。
 いや、変わってしまった――……。

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