わたしだけの吸血鬼

『僕に聞きたいことがあるんじゃないの?』

 士門くんの声が急に頭の中に響いて、キーンと耳鳴りがした。
 何事かと教室の中に見渡してみても、特に異変はない。
 先程と変わらず結美先生が動かす小気味良いチョークの音だけが昼下がりの教室に響いている。
 まさか、私にだけ聞こえているの?

『盗み聞きされていたことはわかっている。君の気配を夜紅から隠したのは僕だからね』

 士門くんの口は閉ざされたまま。もはや吸血鬼ということを隠す気もなさそう。

『あなた達は何者なの?』

 聞こえるはずないのに、つられて頭の中で話しかけてしまった。

『僕たちは――吸血鬼さ』

 間髪入れず、士門くんから返事がある。どうやら、この会話の仕方であっているみたい。

『吸血鬼って一体なんなの?』
『ヴァンパイア、闇の眷属、まあ、名前は色々あるよ。僕達は人間の血を命の源とする種族だ。ある程度成長すると老化が止まるし、大抵の怪我はたちどころに治る。人間にはない特殊な能力も持っている』

 酔っ払いに言うことをきかせたり、頭の中で会話ができるのもそういう理屈なのだろうか。
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