わたしだけの吸血鬼

『士門くんは本当は何歳なの?』
『いくつだと思う?』

 質問に質問で返されたのは、絶対当てられないという自信の表れだった。

『ひゃ、百歳くらい?』
『正解は、"覚えていない"でした』
『そんなの当たるわけないじゃん!』
『吸血鬼が人間と同じ時間感覚のはずがないだろう?人間臭い夜紅と同じにするな』

 傲慢さが鼻について、私は眉を顰めた。
 そもそも私に当てさせる気なんてさらさらなかったのだ。腹立たしい。

『それにしても……あいつの考えることは本当に理解しがたい。手元に置いてるくせに、血を吸わないなんて愚かにもほどがある』

 士門くんは心底呆れたように言った。捕食者が獲物を前にして捕食をしないのは生物としてあるまじき行為だ。
 
『夜紅さんをバカにしないで……!』

 血を吸うことが是という吸血鬼の価値観を否定しない。
 けれど、士門くんが愚かだと断ずる夜紅さんの行動が、行き場のない私を救ってくれたのは事実だった。
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