わたしだけの吸血鬼
『口の利き方には気をつけてくれる?』
士門くんの声色にわずかに苛立ちが混じる。転校して以来、彼の感情が揺れ動くのを初めて見た。
『夜紅のせいで勘違いしているようだけど、吸血鬼にとって人間は単なる食糧にすぎない。せいぜい非常食としての役割を全うするんだね』
「あなたに何がわかるの……っ!」
声を荒らげた後で、ハッと我に返る。
興奮した私はいつのまにか本当に声を発していたのだ。
今や教室中の視線が私に向けられている。
「東雲さん、授業中よ。静かにしなさい!」
「すみません……」
結美先生から注意を受けた私を、士門くんが馬鹿にしたようにクスクスと笑う。
その瞳が怪しく閃く。
夜紅さんと同じ深紅に変化した瞳が、今は不気味で仕方なかった。