わたしだけの吸血鬼

『口の利き方には気をつけてくれる?』

 士門くんの声色にわずかに苛立ちが混じる。転校して以来、彼の感情が揺れ動くのを初めて見た。

『夜紅のせいで勘違いしているようだけど、吸血鬼にとって人間は単なる食糧にすぎない。せいぜい非常食としての役割を全うするんだね』
「あなたに何がわかるの……っ!」

 声を荒らげた後で、ハッと我に返る。
 興奮した私はいつのまにか本当に声を発していたのだ。
 今や教室中の視線が私に向けられている。

「東雲さん、授業中よ。静かにしなさい!」
「すみません……」

 結美先生から注意を受けた私を、士門くんが馬鹿にしたようにクスクスと笑う。
 その瞳が怪しく閃く。
 夜紅さんと同じ深紅に変化した瞳が、今は不気味で仕方なかった。

< 34 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop