わたしだけの吸血鬼

「流衣」
「はい?」
「……お前の叔母に連絡した」
「叔母……さん?」
「ああ、間違いなく流衣の父親の血縁だ。あの親戚の中では珍しくまともな部類の人間だ」

 お父さんに妹がいるとは知らなかった。
 父方の祖父は家長父制の申し子のような人で、家庭では我が物顔に振る舞ったせいで祖母とはお父さんが幼い頃に離婚したと聞いている。
 なぜ今、叔母さんの話などするのだろう。

「流衣さえ良ければ、いつ来てもらっても構わないと言っている」

 嫌な予感は的中してしまった。私は唇を噛み締めた。

「どうして……?私達、今までなんとかやってきたじゃない!」
「俺が何者か――士門との会話を聞いていたんだろう?だからコソコソ調べまわっていた。違うか?」

 私はギクンと肩を揺らした。まさか、夜紅さんに気づかれていたなんて……。

「俺は吸血鬼だ。人間とは違う生き物だ。知られてしまったからには、もう一緒にはいられない」

 本人の口から改めて正体を告げられると重みが違った。
 種族の違いがそんなに重要?
 まるで目に見えない壁を築かれているみたいだ。
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