わたしだけの吸血鬼
『よう、チビ助』
『おじちゃん、だあれ?』
『流衣の母さんと父さんの友達だ』
『お父さんとお母さんは?』
『電車が事故で止まってすぐに帰って来れないんだと。だから、帰ってくるまでおじさんが遊んでやる』
『るい、おじちゃんとは遊びたくなーい!』
『可愛くねえな!この!』
夜紅さんはツンと機嫌の悪くなった私を肩に担いで、ぐるりと保育室の中を一周した。
『わあ!たかーい!きゃはは!』
私は両手を上げて肩車を喜んだ。それが、夜紅さんと過ごした最初の記憶だった。
夜紅さんは私を家へと連れて帰り、おままごとやブロック遊びにも根気強く付き合ってくれた。身体がクタクタになるまで一緒に遊ぶとすっかり日が暮れてしまった。
『るいが寂しい時にはまた来てね』
『ああ、約束だ』
沢山遊んでもらった私は絵本を読んでもらいながら、眠りについた。
翌朝、目覚めた時にはもう夜紅さんはいなくて、入れ替わるようにお父さんとお母さんが帰宅していた。