わたしだけの吸血鬼
死の呪い
耳をつんざく轟音と共に看板が地面に叩きつけられた。凄惨な事故現場を目撃した人達から怯えるような悲鳴が上がる。
地面に横たわっていた私はゆっくりと目を開けた。
(生きて、る……?)
看板の下敷きになったはずなのに、倒れた際に打ちつけたお尻と腰以外はなんともない。どうして?
パラパラと頭上から塵と埃が降ってくる。間を置かずして目の覚めるような鮮やかな血がヌルリと頬に滴り落ちた。
……私と看板の間に誰かいる。
「流、衣……」
「……夜紅さん?」
「うご、くな……」
夜紅さんは苦しそうに低く呻いた。
夜紅さんは私が看板に押しつぶされないよう腕を地面に突き立て、身を挺して庇ってくれていた。そのお陰で、私は辛うじて生きていたのだ。
普通ならペシャンコに押し潰されているところだけれど、夜紅さんの持つ吸血鬼の力が普通なら考えられない奇跡を可能にしていた。
「いるんだろ……出てこい!」
夜紅さんは歯を食いしばり看板の重さに耐えながら、外野に向かって怒鳴った。
「……バレたか」
一拍置いて誰かが応答する。
(士門くん?)
身動きできないので顔は見えないが、声は確かに士門くんのものだった。