わたしだけの吸血鬼
「待って!」
私は夜紅さんを庇うように両腕を広げ、士門くんの前に立ち塞がった。
「やめて!夜紅さんを傷つけないで!」
「このままだと生存本能に負けて吸血欲が暴走する。本物のケダモノになるんだ。そうなったらこの街には干からびた人間の死体がいくつも転がることになる。理性があるうちにこの世から消してやるのがせめてもの情けだ」
邪魔だとばかりと突き飛ばされたが、私はなおも食い下がった。
「ダメっ!」
夜紅さんは絶対に殺させない。たとえ本人が望んでいようと、私が絶対に死なせない。
「邪魔をするな」
士門くんの瞳が冷たく光る。夜紅さんの瞳がいかに温かいものだったことがよくわかった。
(どうすれば士門くんを止められる?)
血液パックの残骸を見れば、答えは簡単だった。
……吸血欲を満たす新鮮な血液ならここにある。
もはや一刻の猶予もなかった。
私は着ていたTシャツを脱ぎ、インナー一枚になると髪を寄せて首筋を夜紅さんの前に突き出した。