わたしだけの吸血鬼
頭の中でメニューを決めると冷蔵庫から食材を取り出し、朝食の支度を始める。
私の名前は東雲流衣。
どこにでもいる、高校二年生……のつもり。
両親が事故で亡くなっていて、親戚でもない男性と一緒に暮らしていること以外は、ごくごく普通の高校生。
「うん。今日も美味しそう!」
昨晩の残り物でお弁当を作り、スクランブルエッグとベーコン、トーストを添えたらとりあえず朝食の出来上がり。
私は一階の一番奥にある部屋で寝ている同居人の夜紅さんを起こしに行った。
ノックなしで部屋に入り、カーテンを開け放って、盛り上がった布団をゆさゆさ揺さぶる。
「朝ですよ!起きてくださーい!」
どれだけゆすろうとも夜紅さんからの返事はない。
(今日も起きないかー。本当に強情な人なんだから!)
私はよっこいせと夜紅さんの身体に掛かっていた布団をめくり上げた。
「やーこーうーさーん!」
耳元で思い切り名前を呼ぶと、ゆっくりと瞼が開いていく。
この瞬間だけはいつもドキリとしてしまう。生まれつきだという深紅の瞳は未だに見慣れない。