わたしだけの吸血鬼
「飲んでくれないなら……私も一緒に死ぬから!」
「流衣……?」
私は後ろを振り返り、士門くんと対峙した。
「士門くん、お願い」
「いいよ。一息で楽にしてあげるね」
とんでもないことをお願いされたというのに士門くんは笑顔で頷いた。彼に人間のような倫理観を求めてはいけない。吸血鬼だから当然といえば当然だ。
「夜紅さん、今まで本当にありがとう」
「やめろ、士門!」
果たして上手く笑えていただろうか。
好きな人に大好きだと伝えることがこんなにも難しいことだったなんて、夜紅さんに出会うまで知らなかった。
ひゅっと勢いよくナイフが射出される。ナイフの切先は全て私の心臓に向けられていた。
鋭い痛みを覚悟したその瞬間、何かに押されるようにしてピタリとナイフが止まった。
「俺の目の前で死のうとするな……!」
私は夜紅さんに守られるように抱きすくめられていた。腰に回された腕の力がぎゅっと強まっていくのを感じて泣きそうになる。