わたしだけの吸血鬼
「本当に……いいんだな?」
「うん……。たくさん飲んで」
私の全身を駆け巡った血潮が夜紅さんの生の糧になると考えただけで、悦びで悶えそう。
首筋に歯が立てられ、鋭く尖った犬歯がプツッと突き刺さる。
「ひ、あっ……」
生き血を吸われるというのは、こんなにも喜びで満たされるものなのだろうか。
全身の血液が首筋に集まり、燃えるように熱かった。
力の押し合いをしていたナイフが目の前ではたき落とされた。夜紅さんの身体にあった擦り傷がすうっと消えていく。
(綺麗……)
オーロラのような力のさざなみを身に纏った夜紅さんは恐ろしいほどに綺麗だった。
(夜紅さん……私……。夜紅さんが吸血鬼だろうとなんだろうと……)
緊張の糸が切れた私は、ゆっくりと瞼を下ろした。