わたしだけの吸血鬼
「私を引き取ったのは死ぬまでの退屈しのぎですか?」
「違う!俺は……!」
夜紅さんが最後まで言い切らないうちに、えいやと抱きしめ返す。
「夜紅さん。私、夜紅さんが生きていてくれてとっても嬉しいです」
「怖くないのか?目の前にいる男は得体の知れないバケモノだぞ?」
「怖くないです」
強がりを言っているつもりはなかった。
夜紅さんはいつだって私を優しく見守ってくれた。バケモノなんて自虐で傷ついて欲しくない。
「夜紅さんは私が死なせません、絶対に」
死を願った奈江さんと、生を望んだ私。
想いの強さが道を分けるというのなら、私はいつだって夜紅さんのことを想い続けてみせる。
「流衣、目を瞑れ」
「はい」
私は夜紅さんに言われるがままに目を瞑った。
何か柔らかいものが唇に触れる。それが、夜紅さんの唇だということに気がつくのに時間はかからなかった。
「マーキングだ」
茫然とする私に、夜紅さんは照れ臭そうに笑いかけた。
ちょくちょく出てくるマーキングという単語の意味を聞きたかったけれど、それどころじゃなくなった。
(夜紅さんにキスされた!)