わたしだけの吸血鬼
夜紅さんと暮らし始めてから、早いものでもう丸一年。
初めは手探りだった共同生活も、一年続ければそれなりに上手く回るものだ。
一人暮らしの長かった夜紅さんに家事をひと通り教えてもらい、今では私も立派に朝食当番をこなすまでに成長した。
些細なことで喧嘩をする時もあるけれど、親戚に引き取られ肩身の狭い思いをすることに比べれば、天国のような生活を送っている。
朝練開始の時間ぴったりに教室にたどり着いた私は、中学校からの親友の凪沙の姿を見るなりとびきりの笑顔を向けた。
「おはよう、凪沙!」
「おはよ、流衣!」
早朝にも関わらず、凪沙のメイクはばっちりだった。
ギャルっぽい見た目で派手だけど、両親の死を一緒に悼んでくれた義理人情に篤い、良い奴だ。
「流衣、私より遅いなんてたるんでない?焼肉優待券を他のクラスにとられてもいいの!?」
「そんなことないよー。私も焼肉食べたいし」
凪沙は勝負事には血が騒ぐタイプ。練習もサボらず真面目に参加する熱血ギャルだ。
他のクラスメイトも集まったところで体育館に移動し、練習を始めていく。