ヴァンパイアの天宮くんは血より私が欲しいらしい
昼休みになると私はいつも通り美琴と席をくっつけてお弁当を食べていた。

いつも通りじゃないのは、私達の周り。

クラスの女子のほとんどが天宮くんの周りに集まっている。

けど、天宮くんはクラスの女子達が話しかけているのをほとんど無視している。


「天宮くんすっごい人気だね〜」


お弁当の卵焼きを食べながら美琴が言う。


朝からこの昼休みの時間まで、天宮くんは1人になる時間が1秒もなかった。


休み時間はクラスの女子達に質問攻めされていてなんだか疲れている感じだった。


「わりぃ、ちょっと…」


そう言って天宮くんは教室の外に出てしまった。


「天宮くん、これから毎日あれだと絶対ご飯食べれないよね〜。」


私だったら絶対無理と手を左右に振って言う美琴の言葉に私はハッとした。

今日、彼はご飯をまだ食べていない。

彼の机の周りを見る限りお弁当らしきものはない。

そして今は昼休みが始まって15分経っている。

この時間、売店には人気があまりない緑茶しか売っていないし、食堂には運動部の男子たちが大勢いるため、食券を買えたとしても席が空いていない。

つまり今、彼は食料難民なのだ!


私はお弁当袋の中にあるヨーグルトとトマトジュースを取り出した。

これは美容にいいと聞いて最近毎日弁当の後に食べている二品。

これで天宮くんがお腹いっぱいになるとは限らないけど…。

何も食べれないよりかはマシ…よね?

急いでお弁当を食べて席を立ち上がると美琴がビックリしてこっちを見てきたので

「ごめん!私ちょっと用事あるの思い出した!」

と言い残して慌てて教室を飛び出した。

天宮くん今頃お腹を鳴らして困ってるのかなと思いながら私は廊下をスタスタと早歩きして彼を探した。
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