溶けない好きに、注いだ体温 (短)

夏祭りには、思い出が詰まっている。


「かき氷下さい、二つ!
あ、お金を払うのはコイツで!」


お互いただの幼なじみだと思っていた時。
食べるカキ氷は、それぞれの手に一つずつ。


「かき氷ください、二つ。
あ?いーよ、俺が払うから」


私が女の子として意識され始めた時。
食べるかき氷は、相変わらず一つずつ。

だけど初めて見る彼の気遣いに、
妙なくすぐったさを覚えた。


「かき氷ください、一つ。
けど、スプーンは二つ貰えますか?」


お互いの気持ちを確認し付き合い始めた時。
間接キスすら恥ずかしくて、
互いに自分のスプーンを求めた。

きっと彼よりも、
芽生えた恋を意識していた私。
そんな私が持つかき氷のカップは、
すごい勢いで水滴が浮かんでいた。
< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop