溶けない好きに、注いだ体温 (短)
「あー、これね!珍しいでしょ!色も紫だし、映えにはもってこいだよ!」
「紫色……」
じゃあ、それにします――と。
私はブドウ味のかき氷を一つ頼んだ。
屋台のおじちゃんはすぐに作ってくれ、
私に手渡す。
冷たくて、気持ちがいい。
おじちゃんにお金を渡し、人混みを外れる。
すると僅かな間で、カップの表面は水滴だらけになった。
「氷、溶けちゃう」
急いで、シロップと氷を混ぜる。色は、紫。
確か紫色は――赤と青を、混ぜた色だっけ。
「うん、美味しい」
一口だけ、口へ運ぶ。
すると体の中に「冷たい」が来たあと、
すぐに「温かい」へ変わった。
「冷たくて、温かい……」
彼と一緒にいない、冷たくて青い気持ち。
それでも、
あの時は楽しかったと思える、温かくて赤い気持ち。
それが混ざった――紫色。