格好のつかない黒羽くんは今日もにぶい。
「奥西さん」
「?」
ふと顔をあげる。
辛うじて名字を知っている程度の,あまり関わらないクラスメートだった。
誰かが声をかけてくるなんて,珍しい。
「奥西さんって,月と結構仲いい,よね?
今もみてたし。男子とはあんまなのかと思ってたけど,その,月はなんで?」
目が合わない。
そんなのは日常茶飯事だけど,それにしてもそわそわと浮わついている態度に疑問が生まれる。
「話し掛けてくれるから,答えてるだけ。それと,なんか……ほっとくと,死んじゃいそうだから」
その何があるか分からない月くんを,遠目でいいから眺めていたい。
気付いたら,待っていて。
気付いたら,目で追っていて。
それが,私にとっての月くん。
その返事は意外だったのか,目の前に立つ男子は言葉を詰まらせた。
「うーん,たしか……に?」