格好のつかない黒羽くんは今日もにぶい。
考えあぐねるような返答。
別に私は彼がなんと思おうとどうでも良かったけれど,一応大人しく続きを待つ。
「じゃあ弟とか,親戚……的な?」
2つ瞬いた。
動揺が,プライドが,そんなくだらない時間稼ぎを私にさせる。
「そう,だね。月くんも私はお姉ちゃんみたいだって。お互い様」
役目を終え,ちょうど私のところへ向かってきた月くん。
目の前の彼と私の不思議な組み合わせに,きょとんとしていた。
そんな月くんを真っ直ぐ見つめて,小さく質問に答える。
月くんは驚いたようにして,そのあと思い出したように首をかしげた。
月くんの発言まで取り上げなくたって良かったのに。
柔らかいとげが,ふんわりと言葉に刺さっていた。
「そうなんだ。ご,めん。変なこと聞いて」
どこか気落ちたように,彼は私に背を向ける。
私は思わず,口を開いた。
何を言うでもない。
でも,考え直し,気まぐれに初めての事をしてみる。
「またね……林くん」
ふと綻びを生み,小さく手を振った。
林くんはさっと顔をそらしてしまったけど。
それが嫌そうではなかったため,私は直ぐまた別の思考へと切り替えた。
私に足りなかったのは,こういうことなんだろうか。
意味もなく引き留め,名前を呼び,またといつかの約束をする。
それが誰かを,安心させるんだろうか。