格好のつかない黒羽くんは今日もにぶい。
怖がられるよって,意識されないよって。

アドバイスだなんだと泣きつかれる度に,ちゃんと真面目に応えたのに。

それでも無邪気に,不器用にも話し掛け続けた結果がこれ。

意識されないどころか,本人には伝わってすらいない。

あんなに毎日毎日,雪乃さん雪乃さんって欠かさず言っては一喜一憂してたのに。

顔も知らない男に負けちゃって。

涙が零れそうになって,私ははっとした。

なんで私が,自分の物ですらない心を哀れむんだろう。

それってすごく,失礼じゃない?

そう考え,思い直しても。

心はずっぷりと深まるばかりで,明るく晴れはしなかった。

そっか,これが,私の心。

私が失恋するとしたら,バレてしまうか,雪乃さんが月くんを向いたときだと思っていた。

でも,違う。

この胸の痛みは,きっと。

……私の恋は,最初から,月くんの恋とセットだった。

雪乃さんに恋してる月くんに恋を自覚したあの日から,ずっと。

もう,諦めよう。



「はぁ」



諦めよう。

すんとした鼻の音に,私は唇を噛んだ。
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