炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「きれいでかわいいお花。きっと、喜んでくれ……、」
――あれ? このお花には……。
「ノア、そこでなにをしているの。離れなさい」
突然とげのある声が耳に届いた。
近くの建物から現れたのは、ビアンカ皇妃だ。ミーシャはカーテシーをして挨拶をした。
「ごきげん麗しく存じます。ビアンカ皇妃」
「フルラ国からきた令嬢よ。いくら陛下の寵をいただいているからと、好き勝手されては困ります。ここには立ち入らないでいただきたい」
ビアンカはショールの端で口元を隠すと、「早く立ち去りなさい」と怒気を含ませた声で言った。
「かしこまりました。失礼いたします」
ノアと遊びたかったが、リアムにビアンカと関わるなと言われている。彼と遊ぶのはまた次の機会にしようと引きさがった。
戻ろうと思い、振り返ったミーシャの横をノアが走り抜けた。ビアンカに近づくと彼は手を伸ばした。
「母さま、見て。庭にきれいなお花が……」
ばしっと、乾いた音が響きわたった。
ビアンカがノアの手を払い退けた音だった。花がはらりと白い雪の上に散る。
「ノア。あなたは次期皇帝になる身。遊んでいないで勉強しなさい」
冷たい視線を向けたあとビアンカは「私を、がっかりさせないで」と、突き放すような言葉を息子に投げて、背を向けた。
彼女は振り返ることなく建物の中へ消えた。
ノアは、その場から動こうとしなかった。下を向き、頭を垂れている。
ミーシャは、散らばってしまった花に手を伸ばした。
――お花が、凍ってる。
すべての花を拾うと、彼のもとへ近づいた。
「ノア殿下。ごめんね。私たちが来たせいで皇妃を……、」
話しかけながら顔を覗くと、ノアの目には涙がたまっていた。一点を見つめ、固まっている。ミーシャは彼の手を掴むと、花を乗せた。
――あれ? このお花には……。
「ノア、そこでなにをしているの。離れなさい」
突然とげのある声が耳に届いた。
近くの建物から現れたのは、ビアンカ皇妃だ。ミーシャはカーテシーをして挨拶をした。
「ごきげん麗しく存じます。ビアンカ皇妃」
「フルラ国からきた令嬢よ。いくら陛下の寵をいただいているからと、好き勝手されては困ります。ここには立ち入らないでいただきたい」
ビアンカはショールの端で口元を隠すと、「早く立ち去りなさい」と怒気を含ませた声で言った。
「かしこまりました。失礼いたします」
ノアと遊びたかったが、リアムにビアンカと関わるなと言われている。彼と遊ぶのはまた次の機会にしようと引きさがった。
戻ろうと思い、振り返ったミーシャの横をノアが走り抜けた。ビアンカに近づくと彼は手を伸ばした。
「母さま、見て。庭にきれいなお花が……」
ばしっと、乾いた音が響きわたった。
ビアンカがノアの手を払い退けた音だった。花がはらりと白い雪の上に散る。
「ノア。あなたは次期皇帝になる身。遊んでいないで勉強しなさい」
冷たい視線を向けたあとビアンカは「私を、がっかりさせないで」と、突き放すような言葉を息子に投げて、背を向けた。
彼女は振り返ることなく建物の中へ消えた。
ノアは、その場から動こうとしなかった。下を向き、頭を垂れている。
ミーシャは、散らばってしまった花に手を伸ばした。
――お花が、凍ってる。
すべての花を拾うと、彼のもとへ近づいた。
「ノア殿下。ごめんね。私たちが来たせいで皇妃を……、」
話しかけながら顔を覗くと、ノアの目には涙がたまっていた。一点を見つめ、固まっている。ミーシャは彼の手を掴むと、花を乗せた。