炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「炎の鳥よ、来て!」
リアムは敵の攻撃を難なく避けた。上空を旋回していた炎の鳥が急降下する。かがり火から生まれた炎の鳥もすごい速さで敵に襲いかかった。
男の袖がぼっと燃え上がる。服に火がついて、男が怯んだ。ミーシャはもう一人に体当たりしようと前傾姿勢を取ったら、目の前に手が伸びてきた。
リアムが阻むようにミーシャの前に出ると、二人の男に向かって手をかざした。彼の手のひらから発生した吹雪が二人に襲いかかる。
視界を遮られ、もがく男たちはあっという間にまっ白になって凍ってしまった。
「令嬢、怪我は?」
「私は、大丈夫です。陛下こそ、お怪我はありませんか?」
「大丈夫だ」
他に敵はいないらしく、しんと静まり返っている。
リアムは男に近寄ると手と足以外の氷を溶かしはじめた。気を失っているようだが、息はある。ミーシャも炎の鳥を使って、氷を溶かすのを手伝った。
「すまない。炎の鳥で助けてくれたんだろう。ありがとう」
「いえ、かえって足手まといでした。助けていただき、ありがとうございました」
深く頭を下げる。するとリアムは目を見開いた。
「あなたを巻き込んだのはこっちだ。……礼はいらない」
ミーシャは首を横に振った。倒れている男たちに目を向ける。
「陛下が無事で、本当によかったです」
男たちは熟練の刺客だった。武器と鍛えられている身体のようすから、あのまま体当たりしても、なんのダメージも与えられなかっただろうとミーシャは反省した。
「ここ数日、付け狙われていた」
氷を溶かしながら、彼の横顔を見た。
「狙われていたのに、なぜお一人だったんですか?」
「捕らえたくて単独行動をして誘い込むためだ。何者なのか、これといった特徴は……見た限りわからないな」
「単独行動? 護衛もつけず、陛下自ら動くなんて、あまりに危険すぎませんか?」
リアムが一人だった理由はわかったが無謀すぎる。思わず眉根を寄せた。
「多少のリスクはしかたがない。結果、捕まえられた。目覚めたら情報を引きだす」
男が目覚めたとき、舌を噛んで自害しないように口を布で縛り、手足も紐で拘束する。それから残りの氷も溶かした。