炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
クレアの生まれ変わり
「消えちゃいましたね」
「精霊獣は気まぐれだ。ミーシャがこの地にいる限りまた、遊びにくる」
リアムは白狼の頭を撫でると、ミーシャに背を向けた。ざくざくと、雪を踏みしめる音が耳に届く。
「陛下、ミーシャさまに気づいてもらえなくて残念でしたね」
「……別に」
「またまた~。ミーシャさまを蕩けるようなお顔で見つめていらっしゃいましたよ」
ぴたりと足を止め、全身に冷気を纏いながらジーンを見下ろした。
「我が国で優秀と噂の宰相殿。その口、今すぐ凍らせてもいいか?」
彼は顔を青ざめると、自分の口を両手で覆った。
長い付き合いだ。ジーンが友人として案じてくれていることは、わかっている。
大事な人を守ると決めてはいる。だが、リアムに残されている時間はごくわずか。特別な相手を作るわけにはいかなかった。
「じゃあ、なんで見つめていたんですか?」
リアムは、手で口元を守りながら訊いてくる彼に、一呼吸置いてから答えた。
「あの美しい髪に、もっと触れてみたいと思っただけだ」
この国では『朱鷺』は幻の鳥だ。空を飛ぶとき翼の一部が太陽に照らされると桃色に輝くという。
朱鷺色の彼女の髪は宝石のようにきらめいてきれいで、柔らかそうだった。もう一度、触れて確かめてみたいと自然に思った。
「……ふむ。なるほど。一緒の寝台を使うことで陛下もやっと、色恋に興味を持たれたんですね」
「ふむ、なるほどじゃない。一緒に寝るのは治療と彼女を守るためだ」
「はいはい。そういうことにしておきますか。で、いつも触っているのにもっと触りたいと?……陛下、やばい人ですねー」
「いつも触っているわけじゃない」
いいわけみたいな言葉を返すと、ジーンはにこりと笑った。
「令嬢が特別なら、けっこうですよ」
「精霊獣は気まぐれだ。ミーシャがこの地にいる限りまた、遊びにくる」
リアムは白狼の頭を撫でると、ミーシャに背を向けた。ざくざくと、雪を踏みしめる音が耳に届く。
「陛下、ミーシャさまに気づいてもらえなくて残念でしたね」
「……別に」
「またまた~。ミーシャさまを蕩けるようなお顔で見つめていらっしゃいましたよ」
ぴたりと足を止め、全身に冷気を纏いながらジーンを見下ろした。
「我が国で優秀と噂の宰相殿。その口、今すぐ凍らせてもいいか?」
彼は顔を青ざめると、自分の口を両手で覆った。
長い付き合いだ。ジーンが友人として案じてくれていることは、わかっている。
大事な人を守ると決めてはいる。だが、リアムに残されている時間はごくわずか。特別な相手を作るわけにはいかなかった。
「じゃあ、なんで見つめていたんですか?」
リアムは、手で口元を守りながら訊いてくる彼に、一呼吸置いてから答えた。
「あの美しい髪に、もっと触れてみたいと思っただけだ」
この国では『朱鷺』は幻の鳥だ。空を飛ぶとき翼の一部が太陽に照らされると桃色に輝くという。
朱鷺色の彼女の髪は宝石のようにきらめいてきれいで、柔らかそうだった。もう一度、触れて確かめてみたいと自然に思った。
「……ふむ。なるほど。一緒の寝台を使うことで陛下もやっと、色恋に興味を持たれたんですね」
「ふむ、なるほどじゃない。一緒に寝るのは治療と彼女を守るためだ」
「はいはい。そういうことにしておきますか。で、いつも触っているのにもっと触りたいと?……陛下、やばい人ですねー」
「いつも触っているわけじゃない」
いいわけみたいな言葉を返すと、ジーンはにこりと笑った。
「令嬢が特別なら、けっこうですよ」