炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
若き宰相殿
どれだけの積雪があろうとリアムには関係がない。
吹雪を蹴散らすように馬を走らせる。すぐ後ろにはジーン、リアムの横には白狼が並走する。十分ほど馬を走らせると、古風で趣のある立派な邸宅に着いた。
「な……んで、我が家なんですか? 陛下!」
アルベルト侯爵は、グレシャー帝国創建時から続く由緒ある一族だ。三十路手間のジーン・アルベルトが当主を務めているのにはわけがある。
「おじさん、ずっと危篤状態なんだろ。お見舞いをしようと思って」
彼の父、エルビィス・アルベルトはこの数年、ずっと病床についている。一昨年前、リアムが帝位に就くと同時に爵位をジーンに譲った。
アルベルト家は代々、宰相を務めてきた。クロフォード家の右腕的存在だ。リアムとジーンは歳が近いこともあり、物心つくころからの付き合いだった。
「父のことは、とうに覚悟をしております」
「俺を心配してくれるのは嬉しいけど、宮殿に詰めすぎだ。……会えるときに会っておけ」
リアムが馬を下りると、ジーンも下馬した。
「ですが……」
「火傷のある碧い瞳の男。この案件についての報告をしてきたのはアルベルト夫人だろ。……お見舞いはついでだ」
ジーンは臣下の鑑だ。いつもリアムを優先し、自分は後回しにする。
彼にはこれくらい強引に無理を通さなければならないと思って、黙って連れてきた。
難しい顔をしているジーンの背中を叩く。二人に気づいたアルベルトの侍従長があわてて外へ出てきた。リアムは愛馬を任せると、傍で待っている白狼に向き直った。
「国境のようす、見てきてもらってもいいか?」
雪の上で腹ばいになって寛いでいた白狼は、立ちあがるとすぐに西に向かって駆けだした。あっという間に吹雪の中へ消えてしまった。
白狼を見送ったあと、さっそく邸宅内へ入った。
寝室の前に着くと、侍従長が部屋の中へ声をかける。ほどなくして返事があった。
招かれた部屋の中は、治療のために焚かれた香油で満たされていた。
吹雪を蹴散らすように馬を走らせる。すぐ後ろにはジーン、リアムの横には白狼が並走する。十分ほど馬を走らせると、古風で趣のある立派な邸宅に着いた。
「な……んで、我が家なんですか? 陛下!」
アルベルト侯爵は、グレシャー帝国創建時から続く由緒ある一族だ。三十路手間のジーン・アルベルトが当主を務めているのにはわけがある。
「おじさん、ずっと危篤状態なんだろ。お見舞いをしようと思って」
彼の父、エルビィス・アルベルトはこの数年、ずっと病床についている。一昨年前、リアムが帝位に就くと同時に爵位をジーンに譲った。
アルベルト家は代々、宰相を務めてきた。クロフォード家の右腕的存在だ。リアムとジーンは歳が近いこともあり、物心つくころからの付き合いだった。
「父のことは、とうに覚悟をしております」
「俺を心配してくれるのは嬉しいけど、宮殿に詰めすぎだ。……会えるときに会っておけ」
リアムが馬を下りると、ジーンも下馬した。
「ですが……」
「火傷のある碧い瞳の男。この案件についての報告をしてきたのはアルベルト夫人だろ。……お見舞いはついでだ」
ジーンは臣下の鑑だ。いつもリアムを優先し、自分は後回しにする。
彼にはこれくらい強引に無理を通さなければならないと思って、黙って連れてきた。
難しい顔をしているジーンの背中を叩く。二人に気づいたアルベルトの侍従長があわてて外へ出てきた。リアムは愛馬を任せると、傍で待っている白狼に向き直った。
「国境のようす、見てきてもらってもいいか?」
雪の上で腹ばいになって寛いでいた白狼は、立ちあがるとすぐに西に向かって駆けだした。あっという間に吹雪の中へ消えてしまった。
白狼を見送ったあと、さっそく邸宅内へ入った。
寝室の前に着くと、侍従長が部屋の中へ声をかける。ほどなくして返事があった。
招かれた部屋の中は、治療のために焚かれた香油で満たされていた。