炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
リアムは適した環境にいれば、簡単に氷を操れる。魔力の消費も激しくない。しかし、温暖な気候のフルラ国ではそうはいかない。

 遠く離れた母国の流氷の結界を維持したまま、適さない環境で魔力を無理やり解放した。

「久しぶりに、フルラ国で魔力を使ったから加減を間違えただけだ」
「今度から加減には気をつけてくださいね?」

 心配が過ぎてうるさく詰め寄る彼に「わかった」と軽い調子で返すと、ますます詰め寄られた。

「……あの、陛下。もう一つ、よろしいですか。見て欲しいものがあります」

 アルベルト夫人はおもむろに席を立ち、ベッド横の収納棚の引き出しから布で包んだ物を取り出した。大事に両手で持ちリアムの前まで来ると、そっと布を開いて見せた。

「サファイアの原石でできた、偽物の魔鉱石です」

 リアムは息を?んだ。
 目の前に、あってはならない物がある。信じられない気持ちで、夫人を見た。

「これを、どこで?」
「最近、主人を見舞う花と本と一緒に送られてきたのです。……オリバー大公殿下のお名前で」
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