炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*

この想いは、しまっておくもの。

*ミーシャ*

「どうしよう……。頭の中にリアムがいる」

 リアムとの早朝の散歩から帰ってきたミーシャは、深いため息を零した。暖炉の前に座って頭を抱える。

「それは、今さらではありませんか?」

 侍女のライリーはあきれ顔で主を見た。ユナやサシャなど他の侍女は席を外している。二人きりなのもあって辛辣だ。

「フルラで引きこもりしていたころからミーシャさまは、リアム殿下を思い出して『かわいいのに賢いの!』って、褒めちぎっていましたよ? なぜかリアム陛下のことは、見ようともしておりませんでしたけれど」

「今は師弟関係ではなく、私では不釣り合いだし、今生では会うつもり、なかったから……」

 ――そう。会いたくなかった。自分は彼の人生の邪魔にしかならない存在だとわかっていたから、関わらないようにしていた。

「ところで、精霊獣は見られましたか?」

 ライリーはミーシャに温かい紅茶を出しながら訊いた。

「うん。遠巻きで見せてもらったわ。触ることはできなかったけれどとても大きくてかっこよかった。ライリーも一緒に見に来ればよかったのに」

「陛下とご一緒するなんて畏れ多い。それに、そんな野暮なことはしませんよ」

 ライリーは「陛下と仲睦まじいようすでよかったです」とほほえんだ。

「愛弟子と仲よくするのはあたりまえです」

 答えてから、紅茶を口に含む。

「あら、たった今さっき、もう師弟関係ではないと仰っておりましたよ?」

 揚げ足を取られたミーシャは、紅茶を口から零しそうになった。

「状況が、変わったのよ……」
「そうですね~」 
「私たち、立場がすっかり逆転しているの。リアムは『ミーシャ』を、子ども扱いしている。ううん。きっと、妹ね」
「は? 誰が誰の妹なんですか?」

 ライリーは目を大きく見開いた。
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