炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
瞬く星空の下で
「……さま。ミーシャさま。どうかされましたか?」
夜になり、就寝の準備をしながらぼおっとしていたミーシャはユナに声をかけられ、我にかえった。
「ごめんなさい。なんでもないわ」
サシャは心配そうにミーシャを見た。
「本当は、カルディアとの国境へ向かうのが不安なんじゃありませんか? ご無理、なさっていませんか?」
「大丈夫、無理なんかしてない。だって、陛下がついているんですもの。不安はないわ」
心配かけないように笑いかける。すると、二人は神妙だった顔を少し綻ばした。
「ミーシャさまは、陛下のことが本当にお好きなんですね」
好きと言われ、顔がぼっと熱くなった。
――この質問、これで何人目かしら。どうやら私は顔に出るらしい。
今さら隠してもしかたない。ミーシャは素直に頷いた。
「あら、あらあら! 我が主ったら、すっごく、かわいらしい!」
「ええ。こっちまで照れてしまいそうです」
「こら、ユナとサシャ。あまり主人をからかう者じゃありませんよ」
二人をライリーはたしなめたが、ミーシャは「いいのよ」と言って、二人に向き合うと、口を開いた。
「戦場に向かうのは初めてですが、私、陛下にもしものときがあれば、身を挺してでも守るつもりでい……」
「身を挺して守る? 何を仰っているんですか!」
「そうです。そんなのだめです。そこは陛下に守ってもらってください!」
ユナとサシャはミーシャの言葉を遮り、騒ぎ立てた。
最初のころは遠慮気味だった二人だが、今はすっかり打ち解けて、慕ってくれている。嬉しくてつい、顔をにやけさせていたが、その間に彼女たちの熱は加速した。
「陛下もミーシャさまをお守りしたいと思いますよ。それで連れて行かれるんでしょう? 万が一、ミーシャさまが陛下を庇って命を落としたら……陛下を悲しませることになります」
「私たちも悲しいです」
ミーシャは、侍女たちの言葉をゆっくりと、噛みしめた。