炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「わかった。それならばきみを人質にして、リアムから魔鉱石をもらおう。一緒にきてくれ」
「お断りします!」
ミーシャは、いっせいに炎の鳥を解き放った。
だがオリバーは、迫り来る炎を前にしても余裕顔だ。
「こんな小さな炎に用はない」
次の瞬間、炎の鳥はオリバーに触れることなく、ふっと煙になって消えた。
「なるほど。本当に魔力のない魔女のようだな」
ミーシャは次々に炎の鳥を呼び、攻撃をしかけたが、彼にとっては火の粉を払うようなものだった。なんのダメージも与えることができない。
炎の鳥を全部使い切ると、オリバーはゆっくりと近づいてきた。
底冷えするような仄暗い碧の瞳に、ミーシャの背中は粟立った。
「……来ないで!」
足元の雪を手で掬うと、オリバーに向けてぶつけた。無駄な抵抗とわかっている。だけどそれでも、リアムが戻って来るまで時間を稼ぐしかない。
――捕まるわけにはいかない!
ミーシャは部屋の中へ逃げこんだ。
照明の火はまたいくつか消えてしまっていて、暗くてどこになにがあるかわからない。家具につまずきながら暖炉に向かう。床に転げながらも炎の鳥を呼ぼうと手を伸ばした刹那、先にオリバーが暖炉の火をたくさんの雪で消してしまった。
「痛ッ!」
頭に激痛が走った。
追いついたオリバーが、腰まで伸びたミーシャの髪を粗雑に掴み、後ろに引っ張ったからだ。
さらに髪を引っ張られ頭皮に痛みが走る。
――逃げなくちゃ!
ミーシャは最後の魔力を使い、両手にそれぞれ火を作った。
振りかえると、オリバーの顔に向かって火をたたきつけた。一瞬怯んだ隙を突いて、掴まれている自分の髪の一部を焼き切ると、オリバーから逃れ、距離を取った。
「トカゲのしっぽ切りみたいな逃げかただな」
――なんとでも言えばいい。
ミーシャは息を整えながら、周りになにか武器になるものはないかと探した。
「しかたがない。少し荒くなるが、氷で拘束させてもらう」
オリバーが手に魔力を集中させている。氷を生成してミーシャに向けて放とうとしたそのとき、部屋のドアが蹴破られた。
「ミーシャ!」
すごい勢いで飛び込んできたのは、リアムだった。
「お断りします!」
ミーシャは、いっせいに炎の鳥を解き放った。
だがオリバーは、迫り来る炎を前にしても余裕顔だ。
「こんな小さな炎に用はない」
次の瞬間、炎の鳥はオリバーに触れることなく、ふっと煙になって消えた。
「なるほど。本当に魔力のない魔女のようだな」
ミーシャは次々に炎の鳥を呼び、攻撃をしかけたが、彼にとっては火の粉を払うようなものだった。なんのダメージも与えることができない。
炎の鳥を全部使い切ると、オリバーはゆっくりと近づいてきた。
底冷えするような仄暗い碧の瞳に、ミーシャの背中は粟立った。
「……来ないで!」
足元の雪を手で掬うと、オリバーに向けてぶつけた。無駄な抵抗とわかっている。だけどそれでも、リアムが戻って来るまで時間を稼ぐしかない。
――捕まるわけにはいかない!
ミーシャは部屋の中へ逃げこんだ。
照明の火はまたいくつか消えてしまっていて、暗くてどこになにがあるかわからない。家具につまずきながら暖炉に向かう。床に転げながらも炎の鳥を呼ぼうと手を伸ばした刹那、先にオリバーが暖炉の火をたくさんの雪で消してしまった。
「痛ッ!」
頭に激痛が走った。
追いついたオリバーが、腰まで伸びたミーシャの髪を粗雑に掴み、後ろに引っ張ったからだ。
さらに髪を引っ張られ頭皮に痛みが走る。
――逃げなくちゃ!
ミーシャは最後の魔力を使い、両手にそれぞれ火を作った。
振りかえると、オリバーの顔に向かって火をたたきつけた。一瞬怯んだ隙を突いて、掴まれている自分の髪の一部を焼き切ると、オリバーから逃れ、距離を取った。
「トカゲのしっぽ切りみたいな逃げかただな」
――なんとでも言えばいい。
ミーシャは息を整えながら、周りになにか武器になるものはないかと探した。
「しかたがない。少し荒くなるが、氷で拘束させてもらう」
オリバーが手に魔力を集中させている。氷を生成してミーシャに向けて放とうとしたそのとき、部屋のドアが蹴破られた。
「ミーシャ!」
すごい勢いで飛び込んできたのは、リアムだった。