炎の魔女と氷の皇帝＊転生したら弟子と契約結婚をすることになりました＊

ブルーガーネット

「ミーシャ？」

　今まさに剣を振りおろそうとしていたリアムは、突然空から降ってあらわれた、クレアの姿をしたミーシャに驚き動きを鈍らせた。

　その隙をオリバーは見落とさなかった。雪と氷をありったけぶつけて、リアムの視界を塞ぎ、体勢をくずした。
　雪をどかしながらリアムは無理な姿勢で斬りかかった。オリバーに傷を負わせると、そのまま流氷の中へ落ちてしまった。

　氷の割れる音と一緒に、白い水しぶきが上がる。
　ミーシャはリアムの名前を叫びながら、流氷の結界に駆け寄った。

「リアム！　どこ？　返事して！」

　氷ばかりの川の中を覗く。底が見えなくて、深さがわからない。周りを探すが、水面は静かで、リアムがあがってくる気配がない。
　
「……クレアにそっくりな魔女さん。会えて嬉しかったと、リアムに伝えておいてくれ」

　オリバーはリアムに切られた胸を大きな布で止血しながら言った。

「待って！　リアムを助けて」
「これは、あいつが作った結界だ。死にはしない」

　オリバーは背を向けると、来た道を引き返していく。

　ミーシャに危害を加える気はないようだ。オリバーの手助けは諦めて、自力で彼を救おうともう一度、流氷に目を向けた。
そのときだった。水面に大きな影が映りこんだ。白狼だ。

　氷と雪の精霊獣は、そのまま流氷の中へ消えた。

　しばらくして、白狼の背に乗ったリアムが水面から顔を出した。ミーシャは思わず飛びこんだ。
　水底に足は着いたが、川の水温は冷たいというより刺すように痛い。それでも漂う氷をかき分け前に進み、リアムに手を伸ばした。

「リアム！」

　リアムはミーシャの手を掴むと抱きしめるように引き寄せた。そして、じっと見つめてきた。

「ミーシャ、なんだよな？」

　どくんと心臓が嫌な音を鳴らした。ミーシャは頷くと「はい」と答えた。
　彼の碧い瞳が揺れる。

「白狼に、捕まって。ここから抜け出そう」

　二人は白狼に助けられながら流氷によじ登り、なんとか抜け出した。
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