炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
朱く燃える太陽の輝き
*オリバー*
暗闇の中をときどき粉雪が舞う。
碧く光る流氷の結界を辿るようにして、オリバーは、足元に朱い血痕をぽたぽたと残しながら、来た道を戻っていた。
「なんとか、うまく、リアムを宮殿から引き離せたが、これはまずいな……」
リアムに蹴られた横腹がずきずきと痛い。切りつけられた胸の傷は深く、布で何度も止血し直しているが止まらない。肩で息をしていたオリバーは立ち止まると、自分の胸に手をあてた。
「凍化を早めるが、しかたない」
応急処置として、これ以上傷口から血が流れ出ないように、オリバーは胸の一部を凍らせて蓋をした。
――リアムは大丈夫だろうか。
時間を稼ぐために氷の宮殿の外へ連れ出せたのは良かったが、危うく、殺されるところだった。
「魔女がいるから大丈夫と思うが」
ミーシャ、だったか。髪は朱鷺色だったが、さっきはガーネットのように燃える朱い髪をしていた。まるで、クレアと対面したときのような緊張感があった。
彼女はおそらく、
「クレアの、生まれ変わりだろうな……」
「オリバーさま――!」
独り言を呟き、痛みを逃していると遠く前方から、自分を呼ぶ声がしてオリバーは目を懲らした。
馬車から身を乗り出して手を振る女性の姿が見て取れた。オリバーの前で止まると、勢いよくドアが開いた。
「早く、乗ってください」
「……すまない。助かったよ、ビアンカ」
ビアンカ・クロフォードはぼろぼろの自分の姿を見て、息を呑んだ。青白い顔ですぐに身体を支えて、馬車に入る補助をする。
オリバーは座椅子に身体を預けると、急に意識がもうろうとしてきた。
「大丈夫ですか?」
「少し、眠る」
身体の力が抜けていくのを感じながら、オリバーは意識を手放した。
暗闇の中をときどき粉雪が舞う。
碧く光る流氷の結界を辿るようにして、オリバーは、足元に朱い血痕をぽたぽたと残しながら、来た道を戻っていた。
「なんとか、うまく、リアムを宮殿から引き離せたが、これはまずいな……」
リアムに蹴られた横腹がずきずきと痛い。切りつけられた胸の傷は深く、布で何度も止血し直しているが止まらない。肩で息をしていたオリバーは立ち止まると、自分の胸に手をあてた。
「凍化を早めるが、しかたない」
応急処置として、これ以上傷口から血が流れ出ないように、オリバーは胸の一部を凍らせて蓋をした。
――リアムは大丈夫だろうか。
時間を稼ぐために氷の宮殿の外へ連れ出せたのは良かったが、危うく、殺されるところだった。
「魔女がいるから大丈夫と思うが」
ミーシャ、だったか。髪は朱鷺色だったが、さっきはガーネットのように燃える朱い髪をしていた。まるで、クレアと対面したときのような緊張感があった。
彼女はおそらく、
「クレアの、生まれ変わりだろうな……」
「オリバーさま――!」
独り言を呟き、痛みを逃していると遠く前方から、自分を呼ぶ声がしてオリバーは目を懲らした。
馬車から身を乗り出して手を振る女性の姿が見て取れた。オリバーの前で止まると、勢いよくドアが開いた。
「早く、乗ってください」
「……すまない。助かったよ、ビアンカ」
ビアンカ・クロフォードはぼろぼろの自分の姿を見て、息を呑んだ。青白い顔ですぐに身体を支えて、馬車に入る補助をする。
オリバーは座椅子に身体を預けると、急に意識がもうろうとしてきた。
「大丈夫ですか?」
「少し、眠る」
身体の力が抜けていくのを感じながら、オリバーは意識を手放した。