炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*

私はあなたの味方

「陛下、こちらへ」

 屋敷に着くとすぐに一番暖かい部屋へ案内した。
 暖炉の前の長椅子(ソファー)に座ってもらう。すぐにリアムの足元を中心に床が凍りはじめた。移動のあいだに体温が下がってしまったようだ。ミーシャは火力を上げるために薪をくべた。

「もっと火の近くで、温まってください」
「すまない」

 ミーシャはリアムの前に座りこんだ。炎の鳥を呼び、床の氷を溶かしながら彼の顔を覗きこむと、閉じられていた瞼がそっと開いた。

「侍従はさがらせたか?」
「はい。彼女たちは寒さに耐性がありませんので」

 ――身体がつらいはずなのに、自分のことより人を心配している。そういうところは変わってないのね。

 侍女たちが魔力に当てられて凍ったら大変だと気遣うリアムに、胸が苦しくなった。

 暖炉の中で薪が爆ぜる音が響いた。ミーシャは火かき棒を持ち、薪を整える。

 ――みんな、まだかしら。

 馬で移動するとき、エレノアやリアムの側近たちがすぐ後ろをついて来ると思ったが、屋敷に着いたのは自分たちだけだった。あとから到着するだろうと思ったがそれにしても遅い。

「他に敵がいないか調べているんだろう。そのうち来る」

 ドアに視線を向けただけで、リアムはミーシャの考えを読み取ったらしい。こほんと咳払いをしてから話しかけた。

「温かい飲み物と、毛布を持って参ります」
「必要ない」

 リアムは自分の手を見せた。

「霜がなくなった」
「見せてください」

 ――霜はたしかにない。きれいな手をしている。

 炎の鳥と、暖炉のおかげで部屋がずいぶんと暖かくなった。血の気が引いてまっ白だったリアムの顔に赤みが戻ってきている。
 ひとまず回復傾向だと安心していると、彼はなぜかじっとミーシャの顔を見つめてきた。
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