炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「本当は、好きって言ってもらいたいよ。でも、母さまがどう思っているかより、ぼくが母さまを好きで、どうしたいかが大事。ぼくは、好きになってもらえるように、がんばればいい」
強くはっきりとした声だった。
オリバーは、目の前にいる小さな氷の皇子を頼もしく感じ、そして、哀れでいとしいと思った。
「子どもは、無条件に愛されるべきだ。なのに、……ごめんな」
――目的のためなら、たとえ目の前にいる幼い子どもでも俺は利用する。
「おじさんの目的はなに?」
「教えたら、叔父さんを手伝ってくれるか?」
「母さまをもういじめないと約束するなら、手伝ってやってもいいよ」
ノアはふんっと、怒りながら言った。
年の割には聡い子だと思ったが、事の重大さがまだわかっていない。ちゃんと子どもらしい一面もあると、オリバーは思わずほほえんだ。
「わかった。約束する」
オリバーは、氷柱から手を離し、ノアに向き直った。彼の瞳を見ながら口を開いた。
「叔父さんの目的は、泉を壊すこと。この冷たい氷の奥深くに、私の大切な人が眠っているんだ」
「大切な人?」
オリバーは、ゆっくりと頷いた。
……――ルシア。
二十年待たせたな。私の希望の光よ今、
会いに行く。
目を閉じると瞼の裏に、彼女の眩しい笑顔が色鮮やかに浮かんだ。