炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「リアム。魔力は使うなといったばかりなのに、なにをしているの?」
「ここは少し視界が開けすぎているから、遮る物を作っている。後方にもいくつか作ってきたよ」
「え、いつのまに?」

 ぱっと、来た道を振りかえると、確かに除雪したあとのように、そこかしこに雪の壁ができていて驚いた。

「視界を遮るのはわかったけど、なんで隠れるの? 急いで逃げないの? オリバーを追うんでしょ?」

「ちょっと、流氷の結界が気になってね。あと、二人で走ったが逃げ切れず、敵に背を打たれるくらいなら、ここで待ち受けるほうがいい。白狼に偵察に行ってもらう。そのあいだ、ミーシャはここに入って」

 リアムに背を押され、大きな雪の塊の中へ一緒に入る。
 白狼はミーシャたちに背を向け駆け出すと、ふっと姿を消してしまった。

「ねえ、リアム! これってもしかして、……かまくら?」
「正解」
「私、かまくらに入ってみたかったの! 念願が叶った!」

 狭いがそれがまたいい。雪の中なのに温かい、不思議な空間。隠れ家のようで気分があがる。

「喜んでもらえて嬉しいが、あまり声は出さないで」

 リアムは呆れた声で言うと座った。

「外も雪を降らせて、視界をさらに塞ぐ。今のうちに身体を温めたいからミーシャ、来て」

 ミーシャは手を掴まれ、彼の方へ引き寄せられた。

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