炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*

「だったら、私のことばかり考えて。憎しみなんてここから追い出しなさい」

 リアムの胸に自分の額を当てた。

「追い出さなくても大丈夫だ。今日、必ず決着をつける」

 顔をあげると、リアムはミーシャの顔に触れ、固定した。そっと、お互いの額を寄せる。

「ミーシャ。お願いだ。力を貸してくれ」

 力を貸すのはいい。だけど、もしもリアムの心がまた、凍りつくことがあったら?
 その考えに及んだとき、胸に痛みが走った。

 クレアの容姿に戻り、二人の元へ飛んで行ったとき、リアムは、本気で血の繋がった叔父を殺そうとしていた。
 静かに熱く燃える碧の炎を、彼の中に見た。

 クレアを失ったこと、父のように慕っていたオリバーの裏切りによって、受けた傷はおそらく一生消えない。
 それだけ、リアムの哀しみは深い。

「心配しないで。私はずっと、リアムの傍にいるわ」
「俺も、きみを離さない」  

 自分を見つめる碧の瞳は、蕩けるほど甘い熱を秘めている。
 頬に触れてくる彼の手は温かく、そっと触れるだけのキスはやさしくて、次々と、消えない火を灯していく。

 やっと温もりを取り戻しはじめたリアムの心が、再び凍りついてしまわないように、必ず守る。

 迫り来る決戦の前に、ミーシャは密かに決意を強くした。


pagetop