炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「そうすると、緩やかながらも流れていた氷の川は……?」
「さっきの報告では、国境を越えたカルディア兵は万を超えたようだ。凍ってしまった侵入者で、川を堰き止めるだろうね」
「水が、溢れる……」
流氷の結界の近くには町がいくつもある。カルディア兵を誘いこんでいる盆地も土地が低い。侵入者を拒み、カルディア兵が次々に凍っていくと川の水が溢れ、たくさんの犠牲者が出る。
そのようすを想像したミーシャは、全身の肌が粟立った。
「氷を、溶かさなくちゃ」
しかもたくさんの氷をいっぺんに。
――炎の鳥ならできる。
ミーシャは魔鉱石を手に持って見つめた。この中に宿る炎の鳥を呼び出せれば、結界で凍ってしまった人たちも、きっと助けられる。
「リア……、」
顔をあげて彼に話しかけようとしたときだった。ミーシャの手は掴まれてしまった。
「今、炎の鳥で、凍った人を助けようと考えただろ」
「はい。私が役に立……、」
「その必要はない。川の水が溢れないように、対策はしている」
ミーシャを見つめるリアムの瞳は真剣で必死だった。
「それでも、なにが起こるかはわからないでしょ? 私が行けば力になれる」
リアムは辛そうに顔を歪めた。
「傍にいれば、守ってやれる。だから、わざわざ俺から離れて危険なところへ行くな」
『悪魔女を倒せ!』
カルディア人たちの声が、頭の中で響く。
戦いの最前線に向かうのは正直怖い。しかし、炎の魔女が行くことで助けられる命がある。ミーシャは覚悟を決めると姿勢を正した。
「カルディア兵を助け、グレシャー帝国兵やそこに住む人々を助けることで、私の前世の罪がすべて償えるとは思わない。それでも私は、行かなければなりません」
――他に選択肢はなかった。
「だめだ。行くな。もう俺は、君を失いたくない。……ミーシャのいない世界など、生きていけない……!」
前世の記憶が蘇り、悲痛な叫び声に胸が痛い。ミーシャはリアムを抱きしめた。
「私もです。リアム」
顔をあげて、手を伸ばす。
「あなたのいない世界など、想像したくない。絶対に嫌です」
輝く銀色の髪と、陶器のように白く滑らかな肌を持つ彼は昔、『氷の妖精』のようだった。
リアムの頬に触れ、青空を閉じ込めたような碧い瞳を見つめながら伝えた。
「『炎の魔女』は、必ず『氷の皇帝』の元へ、舞い戻ります」
リアムはしばらく、ミーシャを見つめ続けた。
「さっきの報告では、国境を越えたカルディア兵は万を超えたようだ。凍ってしまった侵入者で、川を堰き止めるだろうね」
「水が、溢れる……」
流氷の結界の近くには町がいくつもある。カルディア兵を誘いこんでいる盆地も土地が低い。侵入者を拒み、カルディア兵が次々に凍っていくと川の水が溢れ、たくさんの犠牲者が出る。
そのようすを想像したミーシャは、全身の肌が粟立った。
「氷を、溶かさなくちゃ」
しかもたくさんの氷をいっぺんに。
――炎の鳥ならできる。
ミーシャは魔鉱石を手に持って見つめた。この中に宿る炎の鳥を呼び出せれば、結界で凍ってしまった人たちも、きっと助けられる。
「リア……、」
顔をあげて彼に話しかけようとしたときだった。ミーシャの手は掴まれてしまった。
「今、炎の鳥で、凍った人を助けようと考えただろ」
「はい。私が役に立……、」
「その必要はない。川の水が溢れないように、対策はしている」
ミーシャを見つめるリアムの瞳は真剣で必死だった。
「それでも、なにが起こるかはわからないでしょ? 私が行けば力になれる」
リアムは辛そうに顔を歪めた。
「傍にいれば、守ってやれる。だから、わざわざ俺から離れて危険なところへ行くな」
『悪魔女を倒せ!』
カルディア人たちの声が、頭の中で響く。
戦いの最前線に向かうのは正直怖い。しかし、炎の魔女が行くことで助けられる命がある。ミーシャは覚悟を決めると姿勢を正した。
「カルディア兵を助け、グレシャー帝国兵やそこに住む人々を助けることで、私の前世の罪がすべて償えるとは思わない。それでも私は、行かなければなりません」
――他に選択肢はなかった。
「だめだ。行くな。もう俺は、君を失いたくない。……ミーシャのいない世界など、生きていけない……!」
前世の記憶が蘇り、悲痛な叫び声に胸が痛い。ミーシャはリアムを抱きしめた。
「私もです。リアム」
顔をあげて、手を伸ばす。
「あなたのいない世界など、想像したくない。絶対に嫌です」
輝く銀色の髪と、陶器のように白く滑らかな肌を持つ彼は昔、『氷の妖精』のようだった。
リアムの頬に触れ、青空を閉じ込めたような碧い瞳を見つめながら伝えた。
「『炎の魔女』は、必ず『氷の皇帝』の元へ、舞い戻ります」
リアムはしばらく、ミーシャを見つめ続けた。