炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「約束しろ。絶対に戻ると」

 ミーシャはほほえみ、辛そうに顔を歪める彼の頬に約束のキスをした。

「誓います。必ず戻ってくる。だから、行かせて」

 リアムはミーシャの首から下げている碧色の魔鉱石を握ると、声を張った。

「炎の鳥よ。来い」

 リアムの手の中の魔鉱石は一瞬強く発光した。次の瞬間には頭上に、大きな碧い炎の鳥が現われた。

「ミーシャ」

 リアムはミーシャの腰を引き寄せると、少し強引に唇を重ねた。

「……死ぬな。無理や無茶はしないように。俺は先に、氷の宮殿へ向かっている」
「リアムこそ。無理してはだめ。オリバーさまを止めて」
「わかった」
「流氷の結界は私に任せて、絶対にみんなは私が守るから」

 本当は傍にいてあげたい。
 リアムが彼と対面したとき、再び怒りに支配されないか、心配だった。
 想定より多く凍っているかもしれない流氷だが、炎の鳥なら一瞬で溶かせるはずだ。そして、すぐに引き返して氷の宮殿に向かう。

 リアムは炎の鳥に手を伸ばした。

「炎の鳥よ。ミーシャを、守ってくれ」

 自分たちより大きな炎の鳥が、両翼を広げる。ミーシャはもう一度リアムを抱きしめたあと、炎の鳥の背に飛び乗った。

「気をつけて」
「行ってきます」

 鳥の形をした炎が翼を力強く羽ばたかせ、空へと舞い上がった。

 雲の上に到達するのはあっという間だった。
 目の前には、美しい銀色の世界が広がっている。まるで、リアムの髪の色のようだった。きらきらと輝いている。上を見れば、南中に差し掛かった太陽。そして、彼の瞳のような碧い空がどこまでも続いている。

 リアム、大好き。……愛している。
 ミーシャは心の中で想いを伝えると、前を向いた。
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