炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
叔父の目的はなんなのか、ずっと疑問だった。
 イライジャから聞き出したときも、それだけだろうかと頭を過ぎった。

 十六年前。なぜ、フルラ国に攻め入ったのか。クレアを殺そうとした理由や、オリバーがなにを考えているのか、わからない。

『話し合いのテーブルにつく前に、相手を殺してはなにもわからないままでしょ?』 

 ミーシャの言葉を思い出し、リアムはいつでも斬りかかれる間合いを保ちながら「教えろ」と訊いた。

「いいだろう。教えてやる。だがその前におまえに質問だ。リアムは不思議に思わないか? なぜ我々は命を削ってまで民を守らないといけないんだ?」

 オリバーは口角を上げつつも、真剣な目だった。リアムも彼をまっすぐ見据えた。

「クロフォード王家には、人にはない力がある。自分のためではなく、人のために使う力だ」

「グレシャー帝国の王は、人々を導く『希望』だ」

『――力は、自分のためではなく、人のために。そしたらきっと、あなたは、人々を導く希望になる。人を愛し、愛される人になって、幸せな人生を送ってください』

擦りこみだとリアム自身、自覚している。幼少期にクレアに言われた言葉はずっと、リアムの指針で胸にあり続けている。今後も変えるつもりはなかった。

「王家は、人々の希望?」
「そうだ。弱い者を守る。助ける。それが力ある者の務めだ。人がより豊かに発展するために、誰もが笑って日々を過ごせるように、王族は存在する」

「弱い者を助け、人々の希望になってなんになる。王家の足を引っ張るだけだ」

 オリバーは手を広げた。

「力がある我々は、特別な存在だ。民は、王のためにあり、人は管理されるべきだ」
 
『――リアム。物事を一辺倒に見ては、本質を見抜くことはできない。色んな一面があって、見えている面だけがすべてではない』

 幼いころ、そう教えてくれたのは今、目の前にいるオリバーだ。これが本質なのか、見えている面がすべてなのか、見極めようと思った。

「指導者は必要だ。だが、民は王家のために存在していると考えるのは傲慢だ。おまえのような者は、上に立ってはならない!」

 オリバーはふむと言って、目を細めた。

「私を否定するか、リアム」
「あたりまえだ」

 大げさなため息を吐くと叔父は首を横に振った。
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