炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
オリバーは大きな氷の塊の前で、こちらに背を向けて座っていた。炎の鳥からは少し離れている。

 その背を見ただけで殺意が生まれた。すると、また朱鷺色の炎の鳥がリアムの前を飛び、そして、オリバーのそばで倒れているノアのもとへ飛んで行った。甥は気を失っているのか動かない。

 怒りはいったん静め、ミーシャを抱きかかえたまま近づくと、オリバーは背を向けたまま言った。

「魔女は、死んだか?」

 ミーシャを抱く腕に自然と力が入った。リアムはその問いに答えず、オリバーが大事そうに触れている大きな氷の塊の中を見た。

「その女性は誰だ」

 オリバーは、ゆっくりと振りかえった。

「ルシアだ。やっと会えた私の……妻だ」
「カルディア王国の王女、ルシア・カティックか」

 そして、ビアンカ皇妃の姉。
 二十歳前後のビアンカに似た女性が、氷の中で息絶えていた。

「違う。ルシア・クロフォードだ。リアム」

 オリバーは愛しむように、氷の中の女性を見つめた。

「ノアは、どうして気を失っている」

 ノアを見ながら訊いた。
 オリバーは、凍りの塊の中にいる女性から離れ、ゆっくりとリアムに向き直った。

「彼女の救助を手伝って貰った。力を使いすぎて眠ってしまったようだ。ノアは私たちと違って氷を作るより、雪を操作したり、溶かすほうが得意のようだ」

 説明を終えると、オリバーはミーシャに視線を移した。

「ちゃんと、凍り漬けになって、死んだようだな」

 思い描いた通りにことが運んでいるのか、オリバーがリアムに向ける表情には笑みが浮かんでいた。
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