炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「やめろ!」
オリバーは、振り向くとリアムに向かって笑った。
「まずは、ルシアだ。おまえはそこで黙って見ていろ」
きな火柱が上がる。爆風がリアムと気を失っているノアに襲いかかったが、氷の壁のおかげで対応する時間があった。
氷の盾を自分たちの周りに幾重にも築く。火柱の威力はすさまじく、宮殿内の氷を溶かすどころか、天井を突き破った。
崩壊し、崩れた天井から茜色に染まる空が見えた。紛れこんだ粉雪は地下の熱でここにたどり着く間もなく溶けて消えた。
二十年前。洪水を防いだ父のように、雪を降らせ、地下を氷で埋め尽くすべきだ。
「……いや、もう手遅れか」
地下深くにある氷が溶け、地盤沈下で建物が傾きはじめていた。なおも崩れる天井と、ひび割れていく地面。あちこちから聞こえてくる激しい崩壊の音、氷の盾はどろりと溶け、リアムの周りは急激に温度を上げていく。
「白狼!」
リアムの呼びかけにすぐに氷と雪の精霊は現れた。
「ノアを安全な場所へ。先に逃げてくれ」
白狼は地面に横たわり眠っているノアの背中部分の服をがぶりと噛んで咥えた。
「落とさないでくれよ」
後ろ足で立てばリアムよりも大きい白狼は、ノアを仔犬のように咥えたまま、器用に瓦礫を避けて、登りはじめた。その姿はあっという間に地上へと消えた。
リアムの周りの氷はほとんど溶けてしまった。炎の鳥と一体になっているオリバーをあらためて見る。
叔父はルシアの前にいた。通常ではありえない高温に晒されているはずなのに、彼女を取り巻く氷はそのままだった。
――ルシアは、まだ復活していない?
リアムはミーシャを抱きしめたままふたたび立ちあがると、足を一歩踏みだした。地面は地獄の業火のように熱く、一瞬で衣服に火がつく。リアムは氷を纏い、慎重に、ゆっくりとオリバーに近寄っていった。
「リアム。おまえ、なにかしたか?」
オリバーはルシアを見つめたまま、静かな声で訊いた。
オリバーは、振り向くとリアムに向かって笑った。
「まずは、ルシアだ。おまえはそこで黙って見ていろ」
きな火柱が上がる。爆風がリアムと気を失っているノアに襲いかかったが、氷の壁のおかげで対応する時間があった。
氷の盾を自分たちの周りに幾重にも築く。火柱の威力はすさまじく、宮殿内の氷を溶かすどころか、天井を突き破った。
崩壊し、崩れた天井から茜色に染まる空が見えた。紛れこんだ粉雪は地下の熱でここにたどり着く間もなく溶けて消えた。
二十年前。洪水を防いだ父のように、雪を降らせ、地下を氷で埋め尽くすべきだ。
「……いや、もう手遅れか」
地下深くにある氷が溶け、地盤沈下で建物が傾きはじめていた。なおも崩れる天井と、ひび割れていく地面。あちこちから聞こえてくる激しい崩壊の音、氷の盾はどろりと溶け、リアムの周りは急激に温度を上げていく。
「白狼!」
リアムの呼びかけにすぐに氷と雪の精霊は現れた。
「ノアを安全な場所へ。先に逃げてくれ」
白狼は地面に横たわり眠っているノアの背中部分の服をがぶりと噛んで咥えた。
「落とさないでくれよ」
後ろ足で立てばリアムよりも大きい白狼は、ノアを仔犬のように咥えたまま、器用に瓦礫を避けて、登りはじめた。その姿はあっという間に地上へと消えた。
リアムの周りの氷はほとんど溶けてしまった。炎の鳥と一体になっているオリバーをあらためて見る。
叔父はルシアの前にいた。通常ではありえない高温に晒されているはずなのに、彼女を取り巻く氷はそのままだった。
――ルシアは、まだ復活していない?
リアムはミーシャを抱きしめたままふたたび立ちあがると、足を一歩踏みだした。地面は地獄の業火のように熱く、一瞬で衣服に火がつく。リアムは氷を纏い、慎重に、ゆっくりとオリバーに近寄っていった。
「リアム。おまえ、なにかしたか?」
オリバーはルシアを見つめたまま、静かな声で訊いた。