炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「ミーシャ!」

 呼びかけながらリアムは彼女の肩を掴み、身体を揺すったが反応がない。魔鉱石の輝きは小さく収まっていく。

「ミーシャ。目を覚ませ。息をしろ!」

『闇に飲まれ再び命輝くとき、魔女は炎の鳥とともに舞い戻る』
『リアム。魔鉱石を使え』

 ふたたび命輝くときが、今だと思った。リアムは魔鉱石をミーシャの手に握らせ、その上から強く握った。

「炎の鳥よ。ミーシャを、俺のもとへ還してくれ!」

 握っている手の隙間から朱い光が溢れ出ると、目の前に大きな炎の鳥が現れた。

 炎が二人を包みこむ。リアムは、もう片方の手でミーシャを抱き寄せると、彼女に口づけをした。

『リアム。私はずっと、リアムの傍にいるからね』  

 傍にいて欲しい。傍にいたい。なにがあっても俺はミーシャを離さない。
 
 真っ暗な世界に、白い雪がはらはらと静かに舞う。そこに、仄かに(とも)る朱い火。息を吹きかければ、たちまち大火となった。

 ミーシャは、凍化で動けなくなっていたリアムに、口づけで魔力を注いでくれた。同じことを今度はリアムがミーシャにする。

 炎の鳥の中は、凍化で固まっていた身体が一瞬で溶けるほどの熱量だった。
 リアムには炎への耐性がない。それでもかまわず、リアムが魔力と一緒に命を吹きこむと、握りしめていたミーシャの指先が微かに動いた。

 人は、この世に生まれた瞬間、鳴き声をあげるよりも先に、息を吸う。
 魔力を注ぐのをやめて唇を離すと、ミーシャは一度あえぐように息を吸い、目を強く見開いた。

「ミーシャッ!」

 彼女の目がリアムの顔に焦点を結ぶ。紫の瞳が涙で揺れる。泣きながら小さく「リアム」と呼んだ。
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