炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*

銀色の月

*ミーシャ*

 雲一つない、澄みきった夜空に星々が煌めく。リアムの髪色のような銀色の月が自分たちを見守るように静かに輝いている。
 風を切る音を耳で受けとめながら地上を見るが、真っ暗でなにも見えない。

 ミーシャは青白く発光してかがやく流氷の結界を目印に、炎の鳥をあやつって飛んで行く。

「リアム。炎の鳥に触れているけど、大丈夫?」

 ミーシャは自分を後ろから抱きしめているリアムに聞いた。

「魔鉱石を握っているからか身体は大丈夫だ。だが、魔力は使えそうにない。というか、今ほぼゼロだ」
「魔力の回復のために、いったん地上に戻る?」

 魔力は休息をとるか、時間が経てば戻る。リアムは本来、氷や雪の環境下にいればとても強く、回復もはやい。

「帝都まではすぐだろ。大丈夫。このまま行こう」
「わかった」と答え、ミーシャはできるだけ低空を飛び、帝都に向かった。

「オリバーが万の犠牲は出ていないと言っていた。洪水の被害を抑えてくれたのは、ミーシャのおかげだろ?」
「イライジャさまと、騎士団のおかげよ。彼らに避難を最優先にしてもらったの」

 国境付近の結界で見たものを、リアムに話した。

「結界に近づくと攻撃してくるというオリバーが作った氷の狼。気になるな。サファイアの魔鉱石が原動力か?」
「サファイア魔鉱石を作るときに、オリバーさまが魔力を込めたのは間違いないと思う」
「オリバーは、俺のために作ったと言っていた」

 ミーシャは振り向き、リアムを見た。

「氷の狼は救助の邪魔をしてきたけれど、サファイア魔鉱石の本来の目的は、流氷の結界を堰き止めることじゃない……?」
「オリバー本人に聞こう。あいつ、どこにいる?」

 二人で地上に目を向けるが、暗くてよく見えない。

「オリバーが結界内にいるなら、魔力があればわかるのに。今、流氷の結界を操ることができない」

 ミーシャはもう一度振りかえり、彼を見た。

「流氷の結界を、リアムは操っていないということ?」

 リアムは頷いた。
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