炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「崩壊を止めるために氷の宮殿の地下を凍らせたあと、ミーシャに魔力を吹き込んですべて使い切った。だから、結界は魔力の残り。しばらくは機能しているから心配はない」

「力を留|(とど)めているのね。流氷の結界そのものが、魔鉱石みたい。やっぱり、下に降りましょう」

 帝都はすぐ目の前だが、ミーシャは一番近くの川へと急降下した。
 白い雪で覆われた河川敷の上から川を見る。

「ミーシャ、暗くてわかりにくいかもしれないが、あそこを見て。水かさが増したあとがある」

 氷の宮殿の地下にあった氷が溶けて、水となって流れたあとだった。この川の下流が帝都だ。

「宮殿の地下数百キロにも及ぶ下の氷表まで溶けていたら、被害はこんなものじゃなかった。ここも水の中に沈んでいただろう」

 それでも洪水は起こったわけで、ミーシャは悔しくて眉間に皺を寄せた。

「リアム、急いで流氷に触れて。結界があなたの魔力なら、触れたら回復するんじゃない?」

 流氷の結界に近づくと、すぐに川から氷の狼が現れた。

「これが氷の狼か。青くてかっこいいな」
「リアム、魔力ないんだよね。私が……」

 彼の前で臨戦態勢をとろうとした刹那、白い物体が頭上から降ってきた。氷の狼を踏みつける。

「白狼?」

 白狼は狼を簡単に蹴散らすと、リアムのもとへ来て座った。

「ノアを安全な場所へお願いしていたんだ。来てくれてありがとう」

 白狼はリアムにしっぽを振るとすぐに立ち上がり、彼の服を噛んで引っ張った。

「リアム、白狼はなんて?」
「こっちに、オリバーがいるから来いって」

 リアムとミーシャは顔を見合わせると、すぐに白狼を追いかけ駆けだした。

pagetop