炎の魔女と氷の皇帝＊転生したら弟子と契約結婚をすることになりました＊

「それならば、さっそく狼を試そう」

　リアムはサファイア魔鉱石を握ると、流氷の結界内に入った。すぐに氷の狼は現れ、リアムは囲まれた。

「氷の狼たちに命令する。グレシャー帝国民と戦意を失っているカルディア兵には手を出すな」

　命令を出すと、額のサファイア魔鉱石が一瞬強く光った。そのあと、氷の狼は流氷の中へ吸い込まれるように消えた。

「氷の狼を作ってしまうなんて、オリバーの創造はすごいな」

　リアムの言葉にミーシャは頷くと、イライジャを見た。

「イライジャさま、オリバー大公殿下はやはり、陛下を守ろうとしていました」
「というのは？」
「流氷の結界です」

ミーシャはクレア魔鉱石を手に持った。

「魔鉱石は、魔力を溜(た)める器です。そして、留(と)めることで増幅させることができる。流氷の結界はリアムの魔力が留まっている。つまり、流氷自体が魔鉱石のようなものですが、残念ながら広範囲で器が大きすぎる。結界を維持するためにリアムは魔力を消費しすぎて、凍化を招いてしまった。そこで、オリバー大公殿下は魔力を補おうと、増幅できる装置として、サファイア魔鉱石を作った」

　リアムは自分が作った流氷の結界を見つめた。

「流氷の結界は、平和のために作った。我々はこれ以上他国を侵略、進軍しない。その代わり戦争を仕掛けてくるなと言う意味、抑止力だ。俺の身体はどうなっても良かった。ノアが王位に就くまで保てばいい。それまでは結界に魔力をあるだけ注ぎ続けるつもりだった」

　ミーシャがリアムの腕に触れてきたため、彼女を見た。

「結界は、しばらくすると普通の川に戻るが、効果が切れるのは、ずっと先だ。俺が凍化で死んでも数年は維持できるはず」
　それを聞いたミーシャは「え、そんなに保てるの？」と目を見開いた。

「魔力を注がなくても数年持つのはすごいけれど、サファイア魔鉱石のおかげで今後、半永久的に結界は維持できるはずです」

「俺はもう、結界に魔力を注がなくてもいいということか」

　ミーシャは頷いた。