炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「俺は、断っていいと言った」
「私も言いました。そんな状態の陛下を放っておける人はいないと」
「……婚約を受け入れる。ただし……俺の病を治療する期間のみ?」
リアムはミーシャが空欄部分に付け加えた文面を声にして読むと、視線をあげた。
「陛下が、魔力の使いすぎで身体が凍る『凍化病』を患っているとは知りませんでした。他言無用なのも世間に公表していないからですよね?」
「国内外に知られるのはよくない」
「正直言いますと、私、今回も断るつもりでした。けれど、陛下の病を知ってしまった以上、このまま引き下がりたくはありません。病の根本的治療。完治するまでの対処治療をするために、陛下の傍に、仕えさせていただきたいのです」
「俺の傍にいて不自然じゃないのは、婚約者の立場だと言うことか。だが、治療は必要ない」
「本当に? 言わせてもらいますが、陛下の今の状態だと、幼い皇子が大人になるまで保たないでしょう。それでもいいのですか?」
詰め寄ると、リアムは渋い顔になった。
「俺の治療をしたとして、令嬢になんのメリットがある?」
「両国の絆が深まりますわ」
国のためもあるが、本心はメリットよりもリアムの身体が心配だった。
「俺がきみを利用するだけで、フルラ国に見返りはないかもしれない」
「見返りなど、最初から求めておりません。ですが、陛下はさっきフルラを第二の故郷と仰ってくださいました。我が国に不利なことはしないと、私は陛下を信じております」
私のかわいい弟子リアムを、疑う理由など一つもない。
ミーシャは燭台に留まっている炎の鳥を指さした。
「私の魔力はご存じのとおり乏しいですが、炎の鳥は扱えます。陛下の病をひとときですが、緩和することはできる。きっと、お役に立てると思います」
「令嬢が行動力のある女性だということはもう理解している。病弱で引きこもりだと言って避けて来たのには、俺、または我が国の人間になるのが嫌だからじゃないのか?」
「陛下やグレシャー帝国を嫌ってなどいません。私に、やりたいことがあるからです。陛下の病が完治すれば、婚約を白紙にして、国に帰らせていただきます」
混乱を招いた偽物の魔鉱石は燃えて消えた。戦争は終わり、両国間は同盟を結ぶほど平和になったが、まだ病と怪我に苦しむ人がたくさんいる。
クレアの被害にあった人たちを救うことに生涯を捧げる気持ちは今も変わらない。だが今一番治療が必要なのは、目の前にいる人だ。
「私も言いました。そんな状態の陛下を放っておける人はいないと」
「……婚約を受け入れる。ただし……俺の病を治療する期間のみ?」
リアムはミーシャが空欄部分に付け加えた文面を声にして読むと、視線をあげた。
「陛下が、魔力の使いすぎで身体が凍る『凍化病』を患っているとは知りませんでした。他言無用なのも世間に公表していないからですよね?」
「国内外に知られるのはよくない」
「正直言いますと、私、今回も断るつもりでした。けれど、陛下の病を知ってしまった以上、このまま引き下がりたくはありません。病の根本的治療。完治するまでの対処治療をするために、陛下の傍に、仕えさせていただきたいのです」
「俺の傍にいて不自然じゃないのは、婚約者の立場だと言うことか。だが、治療は必要ない」
「本当に? 言わせてもらいますが、陛下の今の状態だと、幼い皇子が大人になるまで保たないでしょう。それでもいいのですか?」
詰め寄ると、リアムは渋い顔になった。
「俺の治療をしたとして、令嬢になんのメリットがある?」
「両国の絆が深まりますわ」
国のためもあるが、本心はメリットよりもリアムの身体が心配だった。
「俺がきみを利用するだけで、フルラ国に見返りはないかもしれない」
「見返りなど、最初から求めておりません。ですが、陛下はさっきフルラを第二の故郷と仰ってくださいました。我が国に不利なことはしないと、私は陛下を信じております」
私のかわいい弟子リアムを、疑う理由など一つもない。
ミーシャは燭台に留まっている炎の鳥を指さした。
「私の魔力はご存じのとおり乏しいですが、炎の鳥は扱えます。陛下の病をひとときですが、緩和することはできる。きっと、お役に立てると思います」
「令嬢が行動力のある女性だということはもう理解している。病弱で引きこもりだと言って避けて来たのには、俺、または我が国の人間になるのが嫌だからじゃないのか?」
「陛下やグレシャー帝国を嫌ってなどいません。私に、やりたいことがあるからです。陛下の病が完治すれば、婚約を白紙にして、国に帰らせていただきます」
混乱を招いた偽物の魔鉱石は燃えて消えた。戦争は終わり、両国間は同盟を結ぶほど平和になったが、まだ病と怪我に苦しむ人がたくさんいる。
クレアの被害にあった人たちを救うことに生涯を捧げる気持ちは今も変わらない。だが今一番治療が必要なのは、目の前にいる人だ。