炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「……やあ、リアム。久しぶり。凍化の具合はどうだ?」
暗くて、寒々とした狭い部屋の寝台で寝ていたオリバーは、ミーシャたちが中に入ると上体を起した。
オリバーは全身包帯だらけだった。
「あれ以来、凍化は起きていない。流氷の結界を作る以前の状態に戻った」
リアムはオリバーの傍の椅子に座った。
ミーシャは、天井付近の小さな窓が塞がれているのに気づき、開けていく。小鳥も通れないほどの大きさだが、詰められていた物を外すと、少しだけ光が射した。
「もしまた凍っても、ミーシャがいれば俺は死なないよ」
「国を思う、賢くてやさしい無敵の皇帝の誕生だな」
「どうだろうな。寵姫に傾倒して、民を疎かにするかもしれない」
「寵姫がそれを許さないだろう」
オリバーと目が合ってどきっとした。ミーシャが意識のあるオリバーに会うのは、あの日以来だった。ぐっと拳を握って向き合う。
「オリバー大公。具合はどうですか?」
「リアムに蹴られた脇腹は治ったよ。狼の牙が刺さった背中の傷はまだ痛む」
リアムを庇い、倒れたオリバーは一週間、生死を彷徨った。やっと少しずつ安定してきたが、まだ動くことがままならず、独房内で静養中の身だ。
「氷の剣で切られた胸の傷は塞がったが、こちらも痛い」
言いながら押さえたオリバーの胸には、ネックレスチェーンで繋がれた指輪が首から下げてあった。
オリバーがルシアに贈った指輪とおそろいだと言う。炎の鳥でも復活できずに彼女は煌めく細氷となって消えたが、そのとき、彼女の薬指にあった光輝くダイヤの指輪も一緒に消えた。
「そんな顔をするな。奥方」
ミーシャは指輪から視線を上げて、オリバーを見た。
「あの暗くて寒い場所から救えたのが唯一、私が彼女にしてあげられたことかな」
オリバーは「一目会えて、よかった」と目を細めた。
「クレア。いや、ミーシャ。二度も殺してすまなかった」
リアムと一緒の、銀色の絹糸のような美しい髪をミーシャは見つめた。自分に向かって頭を下げる彼を、簡単には許せない。だけど……
「オリバー大公殿下。私への謝罪は結構です。あなたが私を許せないように、私もあなたを許せませんから」
オリバーはゆっくりと顔をあげた。彼からゆらりと冷気が発生すると、リアムが席を立ち、ミーシャの横に移動した。
暗くて、寒々とした狭い部屋の寝台で寝ていたオリバーは、ミーシャたちが中に入ると上体を起した。
オリバーは全身包帯だらけだった。
「あれ以来、凍化は起きていない。流氷の結界を作る以前の状態に戻った」
リアムはオリバーの傍の椅子に座った。
ミーシャは、天井付近の小さな窓が塞がれているのに気づき、開けていく。小鳥も通れないほどの大きさだが、詰められていた物を外すと、少しだけ光が射した。
「もしまた凍っても、ミーシャがいれば俺は死なないよ」
「国を思う、賢くてやさしい無敵の皇帝の誕生だな」
「どうだろうな。寵姫に傾倒して、民を疎かにするかもしれない」
「寵姫がそれを許さないだろう」
オリバーと目が合ってどきっとした。ミーシャが意識のあるオリバーに会うのは、あの日以来だった。ぐっと拳を握って向き合う。
「オリバー大公。具合はどうですか?」
「リアムに蹴られた脇腹は治ったよ。狼の牙が刺さった背中の傷はまだ痛む」
リアムを庇い、倒れたオリバーは一週間、生死を彷徨った。やっと少しずつ安定してきたが、まだ動くことがままならず、独房内で静養中の身だ。
「氷の剣で切られた胸の傷は塞がったが、こちらも痛い」
言いながら押さえたオリバーの胸には、ネックレスチェーンで繋がれた指輪が首から下げてあった。
オリバーがルシアに贈った指輪とおそろいだと言う。炎の鳥でも復活できずに彼女は煌めく細氷となって消えたが、そのとき、彼女の薬指にあった光輝くダイヤの指輪も一緒に消えた。
「そんな顔をするな。奥方」
ミーシャは指輪から視線を上げて、オリバーを見た。
「あの暗くて寒い場所から救えたのが唯一、私が彼女にしてあげられたことかな」
オリバーは「一目会えて、よかった」と目を細めた。
「クレア。いや、ミーシャ。二度も殺してすまなかった」
リアムと一緒の、銀色の絹糸のような美しい髪をミーシャは見つめた。自分に向かって頭を下げる彼を、簡単には許せない。だけど……
「オリバー大公殿下。私への謝罪は結構です。あなたが私を許せないように、私もあなたを許せませんから」
オリバーはゆっくりと顔をあげた。彼からゆらりと冷気が発生すると、リアムが席を立ち、ミーシャの横に移動した。