炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*

氷の皇帝と炎の魔女

「馬車じゃなく、単騎で行く? それなら、炎の鳥で飛んで行くのが速いと思うが」

 馬車の前で待っていたリアムに、二人で馬に乗りたいと提案したが、彼は難色を示した。

「空を飛ぶのではなく、グレシャー帝国の雪原を馬で駆けてみたいの。リアムと二人で。だめ、かな?」

 リアムはじっとミーシャを見つめた。
 
――まさか、馬車で二人きりになるのを避けているって、ばれたかしら?

「俺と馬に乗りたいか。しかたないな」

 リアムは明らかにしぶしぶといった顔で折れてくれた。

「お二人とも、単騎で行くのは国境までですよー。フルラ国に入ったら大人しく馬車に収まってください」
「我が寵姫が、それを望んだらな」

 ミーシャはリアムに促され、先に馬に乗った。そのあとに彼が軽やかに飛び乗る。
 愛馬の馬首を一度、みんなに向けた。

「これからフルラ国に向かう。しばらく氷の宮殿の留守を頼む」

 リアムが声を張ると、その場にいるすべての者が一斉に臣下の礼をした。ミーシャは恭しく頭をさげたままのみんなに向かって「行ってきます!」と声をかけた。

「皇帝陛下。そして……皇后陛下。行ってらっしゃいませ。お気をつけて!」
「……私、まだ皇后じゃ、わあっ!?」

 リアムは手綱を強く握り、馬を操作して駆け出す。
 ミーシャは体勢を整えると振りかえり、笑顔で見送るみんなに手を振った。


 後続を置き去りにして、どこまでも白い世界を風を切って走る。馬の蹄でさらさらで柔らかい白い雪が空に舞う。きらきらと輝き、とてもきれいだ。

 ふと真横に大きな白い塊が現れた。白狼だ。一緒に並走して走る。

「ミーシャ、寒くないか? もっとしっかり捕まって」
「大丈夫」

 ミーシャは指輪がある左手を持ちあげ、空にかざした。
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