炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
 炎の鳥だ。よく見ると金色に縁取られた白い手紙をくちばしに咥えている。手を前に差し出すと、炎の鳥はふわりと飛び、手の甲に留まった。

「おはよう。ミーシャ」

 振り返ると、エレノア・ガーネット女公爵がいた。
 緋色に輝く髪をふわりと揺らしながら、こちらへ歩み寄る。

「お母さま、どうしてここに?」
「あなたが部屋を抜け出していると、その子が教えてくれたの」

 炎の鳥は、つぶらな瞳で小首をかしげている。

「外に行くなら中身に目を通してからにしなさい」

 手紙を受け取りひっくり返した。封蝋はされているままだ。次に差出人を見て、息を呑んだ。

 ――グレシャー帝国刻印と陛下のお名前だわ。

 視線をあげるとエレノアはにこりとほほえんでいた。

「娘よ。そろそろ観念して、嫁に行ってくれないかしら?」

 ミーシャは手紙を強く握りしめた。
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