炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「抑止力。隣国カルディアに、攻められないようにですよね」
「そうだ」
「戦争を避けるために、流氷の結界が必要なのはわかっております。ですが、凍化病を発症するほどの大きな魔力が必要ならばやめるべき。陛下は、尊い存在だからです」

 思いが伝わるように、リアムの目をまっすぐ見て伝えた。

「広大な国土すべての川に魔力をそそぐのは、さすがにやりすぎです。どうしても結界が必要というのなら一部だけにするとかはどうですか?」

 リアムは、視線を窓の外に向けた。

「グレシャー帝国には北に高い山脈があり、その麓に帝都クロフドと氷の宮殿がある。上流のここから魔力をそそぎ下流へ、国全体へ伝っていくことで結界を発動させている。たとえば、他国と接している国境付近だけに結界を張るなど、一部だけはできない」

「そうですか……。仰るとおり、魔力をたくさん持つ陛下しかできない。ですが、冷の耐性を超えるのはやはり賛成しかねます。私のように、炎の鳥など、他から補うのがよろしいのでしょうが、陛下より魔力が備わっている者は存在しないでしょう。困りましたね」

「魔力の補助なら、すでにしている」

 ミーシャは、「え?」と驚いて聞き返した。

「氷と雪の精霊が、力を貸してくれている。だが、それでも凍化病の進行は止まっていない」
「魔力が相当必要なんですね」

 リアムは、自分の身体がどうなろうがおかまいなし。あらゆる手段を用いて結界を維持しているということだ。
 直接説明を聞き、流氷の結界を自分の目で見て正解だった。ただ、思っていた以上に打つ手がない。どうすればいいのかはすぐにいい案が浮かばず、ミーシャは頭をかかえた。

 ――冷の耐性を超えて凍えてしまわないように温める。今は、それしか方法がない。

「少し、考えてみます。治療、というか魔力消費をしない方法が浮かぶまでは、炎の鳥を呼んで、お渡しする対処療法を続けましょう。薬草とかも色々と試してみたいと思いますのでご協力をお願いします」
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